夏祭浪花鑑

投稿日:2013年06月18日
201307haiyaku-omote (1)

平成19年夏休み公演チラシ

『夏祭浪花鑑』なつまつり・なにわかがみ

世話物 三婦内(さぶうち)長町(ながまち)(うら)の段

 

「主な登場人物」

 

団七九郎(だんしちくろ)兵衛(べい)侠客(きょうかく)に憧れる男。

(たつ)=団七の仲間、一寸徳兵衛の女房。

()(へい)()=団七の女房お梶の父親。

釣船三婦(つりふねのさぶ)=老侠客で今は船宿主。

 

「あらすじ」

主人公・団七九郎兵衛は人の役に立つ“侠客”に憧れを持っていた。団七はつまらない喧嘩で入牢するが、玉島兵(たましまひょう)太夫(だゆう)という侍のおかげで放免され恩義を感じる。その兵太夫の(せがれ)磯之丞(いそのじょう)は、傾城(こと)(うら)と深い仲。団七は玉島家へのご恩返しに、二人を守ろうとする。

琴浦には大鳥(おおとり)佐賀(さが)()衛門(もん)という悪侍も目をつけていた。先に団七が喧嘩したのも佐賀右衛門らの中間(ちゅうげん)だった。佐賀右衛門は琴浦を我がものにしようと三河屋(みかわや)()(へい)()と手を組んでいる。義平次は団七の女房お梶の父親、つまり団七の舅に当たった。しかし、人の為に尽くす団七とは異なり、義平次は金の為ならどんな悪事も働く人物だった。

琴浦と磯之丞は団七の仲間で老侠客の三婦の家に匿われていた。そこへ、団七とは義兄弟の一寸(いっすん)(とく)兵衛(べい)の女房お辰がやってくる。磯之丞の安全を考え、大坂から徳兵衛の故郷・備中まで連れて行こう・・・。磯之丞をお辰自身が連れてゆくと話す。しかし三婦は「若い男女の旅は間違いの元」と大反対。するとお辰は大胆な行動に出る。なんと自分の顔に“焼けた鉄の棒”を押し当て「この顔でも色気がありますか!私はこの通り色気など無しで磯之丞を守ります!」と女ながらも“心意気”を見せ、そのお辰の性根を知った三婦は磯之丞を託し、大坂から備中へと落とした。

ところがそのあと、団七の舅で悪党の義平次が現れ、琴浦を連れ出した。佐賀右衛門に渡して金にする魂胆だ。「また義理のオヤジの悪だくみか」と団七は慌てて後を追い掛け、何とか言いくるめて琴浦を連れ戻す。しかし騙されたと知った義平次は逆上し、団七を散々に打ちのめす。そして揉み合う内、義平次を傷つけてしまった団七は「もはやこれまで」と義平次を殺害した。賑やかな夏祭の夜の殺人だった。

 

「ここを観て・・・聴いて・・・」

 

侠客の世界といえば、女には関係ないものと思われがちだが、ここでは男に負けない“女侠客”が登場する。お辰がそれだ。黒の夏物をビシッと着こなす姿は、正に「極道の女」といったところ。そのお辰が、磯之丞の件で三婦と掛け合い、思わぬ言葉を投げ掛けられる。「こなたの顔には色気がある・・・」。

この時、お辰の顔から血の気が失せ、さっと青ざめる。冷静に考えれば、人形の顔が青ざめるハズがない。しかし確かに、そのように見えた。人形遣いも道を極めると、ここまで表現してしまうのだからスゴイ!

◎ 殺しの美学

 

物語のクライマックスは、舅殺しが行なわれる長町裏の段。大坂の下町、高津(こうづ)神社祭礼の夜、大坂特有の賑やかなダンジリ囃子が聞こえる中、泥田で血みどろの殺人が展開される。

確かに陰惨な場面ではあるが、暗い舞台面に、目も覚めるような白い肌を見せる団七。赤い下帯が一本。そして背中には鮮やかな雲竜の彫り物。これが実にカッコイイ。要所要所で美しく形を決めての殺人、これぞ正に“殺しの美学”。

 

 

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