『団子売』 だんごうり 景事
「登場人物」
杵造 団子売の夫
お臼 団子売の女房
「あらすじ」
杵造とお臼という団子売の夫婦がいる。二人は街中で団子を売るが、これが杵と臼を使い“出来たて”を売っていた。もう大評判で、いつも飛ぶように売れるという夫婦の団子。今日も早速、団子作りに取りかかる。そして杵造は赤い鉢巻をした姿、お臼はおかめの面を付けた姿で踊り、この夫婦円満めでたい様子を見せると、また二人は団子を売りに次の場所へと向かってゆく。
「ここを観て・・・聴いて・・・」
夫婦が団子を売る、ほのぼのとして、めでたい踊りの一幕・・・。これでは、お堅い国立劇場のパンフレットそのままの説明で面白くも何ともない。そもそもこの踊りは、江戸の町の様子を描いた歌舞伎の“風俗舞踊”である『玉兎』を文楽の景事に移したもの。
昔の芝居小屋は客が飲食を楽しみながら見物する、まるで宴会場のようなもの。そんな客を喜ばせる、ちょっと際どい文句がよく歌詞に入っていた。この曲でも「父(ととん)が上から月夜はそこだよ、やれこりゃ良いこの団子が出来たよ・・・」とある。男が上に乗っかり行為を成せば、団子が出来る・・・。つまりこれは団子作りに見せかけ、実は男女の営み“子作り”を歌っていた。
「まあ嫌らしい、だから“フーゾク舞踊”なのね」だなんて思わないで欲しい。子供が出来るということは子孫繁栄につながるので、昔の考え方では実におめでたいことだった。しかしまあ「男が上に乗っかって・・・」とは、ちょっとパンフレットには書けないでしょうねえ。
( 了 )