奥州安達原

投稿日:2014年10月21日

『奥州安達原』(おうしゅうあだちがはら) 時代物

201411poster袖萩祭文(そではぎさいもん)の段

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「主な登場人物」

 

安倍(あべの)貞(さだ)任(とう)   滅亡した安倍一族の一人。

安倍宗(むね)任(とう)   貞任の弟。

袖(そで)萩(はぎ)     平傔仗の娘で、貞任の妻。

平傔仗(たいらのけんじょう)  袖萩の父で、皇弟の守役。

源義家(みなもとのよしいえ)  傔仗の婿で、袖萩の義弟。

 

「あらすじ」

 

奥州の雄でありながら、都の勢力に滅ぼされた安倍一族。その生き残り、安倍貞任・宗任らが源義家らに復讐を図り、奥州に“独立国家の建設”をもくろむという、一大スケールの作品。

奥州に新国家を樹立させるため、貞任らは帝に代わる存在として、皇弟・環宮(たまきのみや)を誘拐していた。環宮の守役・平傔仗は誘拐の責任を問われ切腹の時が迫る。父の危難を知り、娘の袖萩が孫娘を連れ会いに来るが、袖萩は駆け落ちをした身で父は対面を許さない。

夫と離れ離れになった袖萩は、娘お君と共に物乞いをする身にまで落ちぶれ果て、心労が重なり盲目になっていた。「そうした境遇になったのも、親に逆らった罰である。おまえの夫など、どうせ下司下郎に違いない」と娘をなじる傔仗。反論する袖萩は、父に夫の手紙を見せる。そこには“安倍貞任”という名があった。またその筆跡から、環宮の誘拐犯も貞任と判明する。

娘が大謀反人の妻とは何と皮肉なこと…。傔仗は「我が命運もこれまで」と切腹を覚悟する。そして、傔仗の切腹を見届けに来たのが、桂中納言則(のり)氏(うじ)という貴族。実はこれが安倍貞任で、貞任は秘密を知った傔仗の口を封じ、傔仗が持つ証拠の書状も奪い取った。

傔仗の切腹と同時に、娘の袖萩も自らの胸に刃を当てていた。貞任にとっては妻と舅の死。しかし貞任は、館を悠然と去ろうとする。と、そこへ軍勢が押し寄せてくる。これは源義家が、貞任の正体を見破ったのだった。最後は弟の安倍宗任も加わり義家に挑みかかろうとするが、戦場での再会を約し、両者は別れる。

 

「ここを観て・・・聴いて・・・」

 

この長い一段を最後まで観ると「スゴイ物語だったなあ…」という想いにさせられる。大曲とは正にこういうもの。

そして見どころの一つ“袖萩祭文”。ここは「ちょっと卑怯な手では?」と言いたくなるほど、泣かせる場面が続く。

雪がしんしんと降る寒空の下、盲目の袖萩が破れた三味線を弾きながら、両親に自分の身の上を語り、娘のお君を「あなた方の孫です」と紹介する。毎日の物乞いで弾く、しおれた祭文の節回し。素足で凍える親子を眺めていると、こちらまで身が縮み、その哀れさに、思わずホロッとさせられる。

 

◎ 緩急バランスの妙

 

感動的ではあっても、シンミリした場面ばかりを見せられては湿っぽくなってしまう。貴族に化けた貞任が「太鼓の音のかまびすし」で大きく形を決めるところや、“段切”近く、弟の宗任が「奥州に押したて押し立て!」と勢い込むところは、人形と語りがガップリ四つに組んだ面白さで、「これぞ!人形浄瑠璃」の想いを抱かせる。

( 了 )

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